新卒新入社員研修やインターンシップで挑戦するビズストーム研修
株式会社オリエンタルベーカリー 総務部係長
右田 綾子 さま(ビズストーム認定インストラクター)
聞き手:箕作千佐子(ビズストーム開発者)
ビズストームでは、10周年記念企画のひとつとして「ビズストームの効果」をテーマとしたアワードを開催いたします。この記事はノミネートされた事例についてインタビューでご紹介するもので、後日投票により受賞者が決定します。
――御社では、新入社員研修でビズストームをご活用いただいていますが、導入された経緯や狙いにはどのようなことがあったのでしょうか。
私はずっと会計畑で、現在もグループ会社を含めて経理全般を担当しています。そんな仕事柄もあって、以前から経営や利益構造を理解できる社員が増えたらもっと会社がよくなるのでは、という気持ちを持っていました。そこではじめは既存の社員研修に活用することを想定して、ビズストーム認定インストラクターを取得しました。
しかし総務部内での交流も兼ねて何度かビズストームを実施してみたところ、これは若い人の方がなじみやすいし、勉強になって親睦も深まるので新入社員研修に導入してはどうかということになりました。
実際にやってみると、若い社員にとってゲーム形式の研修はとてもとっつきやすく、楽しく学べてメリットが大きいと感じました。ゲームを通じて利益構造や商品力、競合の理解を深めることと併せて、新入社員どうしの関係づくりも大きなねらいになっています。
インターンシップでもビズストームを実施することがあって、ゲームで学べるプログラムがあることが、応募者を増やす一因にもなっているようです。
――確かに若い方の方がゲームになじみがあり導入しやすいですね。親睦を深めることが目的のひとつになることもよくお聞きします。
新入社員研修では、どのような構成で進めているのですか?
導入当初は半日の研修とすることが多かったのですが、最近では、6時間ほど使って実施しています。ゲームと講義を組み合わせた形式です。
ここ数年では、高卒の社員が増えたため、しっかりとルールを理解して楽しめるようにゲームの時間を長めに設定するようにしています。ゲーム後の講義では、経営を学ぶ基本的な内容を扱いながら、社員が理解しにくいと思われる「利益の出し方」や「競合の戦略」、「商品力の理解」を解説しています。ゲームの様子を見ていて、理解が不足していそうな点を中心に補足するようなイメージです。
ビズストームのテキストは色々な内容を扱っていて便利なので、必要な部分を抜粋して使用しています。自由に閲覧できるようにして、分からないことがあれば読んでね、と声をかけたりもしています。
――講義部分もカスタマイズしていただいているのですね。弊社で提供している講義スライドも色々とありますが、会社に合わせてカスタマイズいただくと効果が高まると思います。テキストも効果的に活用いただけているようでとても嬉しいです。
ほかに研修で工夫していることはありますか。
受講者の理解に時間がかかりそうな場合には、ゲームに入る前に実際に「商品カード」を使って商品を作ってみる時間を設けるなど、体験的に理解を進められるように工夫しています。それから、最後の振り返りの時間では、優勝した社員に必ず一番初めに感想を述べてもらうようにしています。そうすると、利益に意識が向いていなかった社員の気づきにつながっているようです。勝った社員は、ほとんどの場合、利益を意識して行動した結果、成功していますからね。
私自身も講師として参加者のプレイやその戦略を聞いている中で、毎回新たな発見があってビジネスの理解が深まっていると感じています。
――仲間の感想から気づきを得るというのは、身につきやすく受け入れやすい学びになりますね。
ビズストームを体験した社員さんの反応や感想はどのようなものが多いでしょうか。
終了後の感想では、「次はこうしたい」という改善意識が多く見られます。例えば、「Cのセグメントを狙っていたが、従業員を雇いすぎて失敗した」といった具体的な反省が出てきます。こうした主体的な気づきは、大きな成長の機会になりますので、それぞれの気づきについて可能な限り講義を通してフィードバックをするようにしています。先ほどの反省を述べた社員には、需要と供給のバランスを考えることの重要性を解説し、戦略的に行動することの必要性を伝えました。
――研修を受けた方々のその後の様子はいかがでしょうか。なにかビズストームの影響を感じられることはありましたか。
4年前にビズストームを受けた社員が、今でもその時の経験をよく覚えていて、研修で学んだ内容が記憶に残っていることを話してくれたことがありました。楽しんで学べたからでしょうか、ビジネスゲームで学んだことを記憶している社員は多いです。ということは、きっと私が想定していた通り、利益構造の考え方やその大切さについても理解が残っている社員もいるだろうと期待しています。
――ビジネスや利益構造について少しでも意識をすることがあれば、仕事のしかたにもよい影響が出ていそうですね。
ビジネスを学ぶこと以外のゲーム研修の効果や、新入社員の成長を感じることはありますか。
ひとつには、新入社員同士の親睦が深められることや本人の素の様子が見えることです。コミュニケーションが苦手で、少し沈んでいるようにも見えた新入社員がゲームで活躍した結果、雰囲気が良くなったケースもありましたよ。「大企業フェーズ」などのチームで協力して行う作業を率先して行ったことが契機になって、周りとなじむことができたようです。表情も明るくなっていったのを印象的に覚えています。
また採用面接や入社式などでは緊張感のある様子しか見ることができませんが、ゲーム中はリラックスしてその人らしさが見えてきます。そんな面を人事担当とも共有するようにしているので、その点でもメリットがあるのではないかと思います。
もうひとつは、主体性を引き出せていることだと思います。おとなしくてあまり今まではあまり発言がない社員も、だんだん積極的になってくる様子がよく見られます。「手が挙がらなければ分かっているものとして進める」とはじめに伝えていることもありますが、理解できていないとすぐに自分が困ってしまいますので、主体的にならざるを得ないですね。ビズストームは1人で1社を経営するからこそ、社員が主体的に手を挙げて質問し、自ら考えて行動する姿勢を身につけるよい練習になっていると思います。社会人としての基本である「自分から確認すること」や「問題があればすぐに報告すること」を体験的に学んでくれているのではないでしょうか。
――新卒社会人には真っ先に身につけて欲しい姿勢ですね。ゲーム研修はルールを理解する時間が余分に必要になりますが、その時間も研修効果につなげていただいているのが素晴らしいです。
もともと意図されていたビジネスや利益構造の理解だけでなく、仲間との関係づくりや主体性の促進など、幅広くビズストームの効果をお聞きできました。ありがとうございました。
<執筆 石川梨絵子(ビズストーム認定インストラクター/中小企業診断士)>